ユニバーサルデザイン ガイドライン

動画・音声

Web・SNS・イベント・社内研修などで公開する動画、字幕・テロップ、音声解説、ポッドキャストやライブ配信を対象とする。動画プレーヤーの操作性はWeb・アプリも参照する。

0. 前提

0.1 このガイドラインの読み方

  • 必須 は規格・法令・国際基準が要求する水準を示す。
  • ラベルのない項目は、規格の推奨値や、公的機関・専門機関の推奨を示す。
  • 根拠にした規格・資料は、末尾の「出典」にまとめている。
  • 章立ては全媒体で共通である。同じ番号の節には、どの媒体でも同じ種類の情報が載っている。
  • その媒体に当てはまらない節は省いている。

0.2 ユニバーサルデザインの7原則

ノースカロライナ州立大学ユニバーサルデザインセンター(1997)が定めた原則である。本ガイドラインの具体ルールは、いずれかの原則に対応する。

7原則と設計上の意味
原則設計上の意味
1. 公平な利用誰でも同じ方法で使える。特定の人だけを別扱いしない。
2. 利用における柔軟性利き手・速度・入力方法などを選べる。
3. 単純で直感的な利用経験・知識・言語能力に依存せず使い方がわかる。
4. 認知できる情報視覚・聴覚・触覚など複数の感覚で情報を伝える。
5. 失敗に対する寛大さ誤操作が危険につながらず、取り消せる。
6. 少ない身体的な努力無理な姿勢や強い力を必要としない。
7. 接近や利用のためのサイズと空間体格・姿勢・移動手段にかかわらず届き、操作できる。

0.3 利用者の多様性

色覚

  • 日本人男性の約5%(20人に1人)、女性の約0.2%(500人に1人)が一般色覚と異なる色覚をもつ。〔川崎市カラーUDガイドライン〕
  • 内訳はD型(2型)が男性の約3.5%、P型(1型)が約1.5%である。どちらも赤〜緑の範囲の色の区別が難しい。
  • P型では赤が暗く見える。濃い赤は黒とほぼ区別できない。
  • 色相の区別は難しいが、明度差には敏感である。

加齢・視力

  • 白内障では水晶体が濁り、青系統の光を通しにくくなる。青が暗く見えて黒と区別しにくくなり、白とクリーム色、緑と青、同系色や淡い色同士も区別しにくくなる。〔川崎市カラーUDガイドライン〕
  • 白内障の総患者数(継続的に治療を受けている人)は140万人を超え、65歳以上の人口の約5.6%にあたる。〔川崎市カラーUDガイドライン(2011年)〕
  • 視力が低下したロービジョンの人は、文字に近づいて読んだり、画面を拡大したりする。視野が欠けている人は、大きすぎる文字の一部しか見えないことがある。〔国交省バリアフリー整備ガイドライン〕

聴覚

  • 加齢で耳が遠くなった人を含めると、難聴の人は全国で約3,000万人と想定されている。〔字幕付きCMハンドブック〕
  • 加齢で高い周波数の音から聞こえにくくなる。〔JIS S 0013〕

言語・認知

  • 在留外国人は約293万人(2019年末)で、上位10の国籍・地域の公用語だけで9言語になる。〔やさしい日本語ガイドライン〕
  • 日本語を「日常生活に困らない言語」とする外国人は約63%である。情報発信の言語として「やさしい日本語」を希望する外国人は76%である。〔やさしい日本語ガイドライン概要〕
  • 情報の処理に時間がかかる人、多くの手順を覚えられない人、光や音の刺激に敏感な人もいる。

状況による制約

  • 障害がなくても、騒音下で音が聞こえない、屋外で画面が見えにくい、片手がふさがっているなど、一時的に同じ困難が生じる。

0.4 この媒体の前提

  • 動画の情報は、映像と音声に分かれる。聞こえない人には音声の情報が、見えない人には映像だけの情報が届かない。
  • 字幕には、音声を文字にしたキャプション(話者名や効果音も含む)と、別の言語に翻訳した字幕の2種類がある。〔Apple HIG〕
  • テレビのクローズドキャプション(視聴者が表示を切り替える字幕)はフォントを指定できない。オープンキャプション(映像に焼き込んだ字幕・テロップ)は制作者が表示を決める。〔字幕付きCMハンドブック〕
  • 字幕の書き方には、公的に統一された基準がない。組織内で共通ルールを決めて運用する。〔PEPNet-Japan〕

1. 知覚

1.1 色

避ける色の組み合わせ

必須 次の組み合わせで情報を区別しない。右3列は、左の2色がP型・D型の色覚でどう見えるかを示すシミュレーションである。〔WCAG 1.4.1、川崎市カラーUDガイドライン、国交省バリアフリー整備ガイドライン、伝わるデザイン〕

赤 と 緑
赤 と 茶
緑 と 茶
濃い赤 と 黒黒背景の赤文字も読めない。
黄緑 と 黄
オレンジ と 黄緑
青 と 紫
水色 と ピンク淡い色同士は区別しにくい。
ピンク と 灰
紫 と 灰

シミュレーションはMachadoら(2009)の2色覚モデル(強度)で算出した。実際の見え方には個人差がある。

高齢者(白内障)で見分けにくい組み合わせ

✕ 青 と 黒

青が暗く見えるため黒と区別できない。

✕ 黄 と 白

水晶体の黄変で白が黄みを帯び、差が消える。白とクリーム色も同様である。

文字色と背景色の組み合わせ

必須 明度差のない文字と背景、混同しやすい色同士の文字と背景を使わない。色背景の上に色文字を重ねず、明るい背景には暗い文字、暗い背景には明るい文字を置く。〔WCAG 1.4.3、川崎市カラーUDガイドライン〕

✕ 悪い例
白地に黄 白地に空色 赤地に緑 赤地に紫 黒地に赤 濃い青地に赤 茶地に緑 黒地に濃い青
◯ 良い例
白地に黒 黄地に黒 空色地に黒 赤地に白 緑地に白 黒地に黄 黒地にクリーム

暗い背景に文字を置くときは、赤ではなく白・黄・クリームにする。

色の選び方

色だけに頼らない

必須 色は情報を補強する手段として使う。色が見分けられない人や白黒コピーでも伝わるよう、次のいずれかを併用する。〔川崎市カラーUDガイドライン、WCAG 1.4.1〕

✕ 色だけで区別し、凡例が離れている 悪い例:赤・緑・オレンジ・黄緑の4本の実線を同じ太さで描き、凡例をグラフの右に分けて置いた折れ線グラフ。 A B C D

P型・D型ではAとB、CとDが同じ色に見える。凡例との対応も取れない。

◯ 色・マーカー・線種・直接ラベルを併用 良い例:推奨配色の赤・青・オレンジ・空色を使い、丸・四角・三角・菱形のマーカーと実線・破線を組み合わせ、各線の右端に系列名を直接書いた折れ線グラフ。 ABCD

白黒印刷でも4本を区別できる。

✕ 赤文字だけで強調

提出期限は 10月15日(水) です。

P型では黒文字と区別できず、強調に気づけない。

◯ 朱色+太字+下線

提出期限は 10月15日(水) です。

色が見えなくても太字と下線で強調が伝わる。

推奨カラーパレット

CUD推奨配色セット ver.4(カラーユニバーサルデザイン機構)は、一般色覚・P型・D型・弱視・白内障の人による評価を経て選ばれた20色である。20色のどの組み合わせでもよいわけではない。組み合わせるときは明度差をつけ、シミュレーションで確認する。

CUD推奨配色セット:アクセントカラー(サイン・グラフ・文字色向け)

赤#FF4B00
黄色#FFF100
緑#03AF7A
青#005AFF
空色#4DC4FF
ピンク#FF8082
オレンジ#F6AA00
紫#990099
茶#804000

CUD推奨配色セット:ベースカラー(地図・背景など広い面積向け)

明るいピンク#FFCABF
クリーム#FFFF80
明るい黄緑#D8F255
明るい空色#BFE4FF
ベージュ#FFCA80
明るい緑#77D9A8
明るい紫#C9ACE6

CUD推奨配色セット:無彩色

白#FFFFFF
明るいグレー#C8C8CB
グレー#84919E
黒#000000

印刷用のCMYK値と塗料用のマンセル値は、CUDOのガイドブックに記載されている。

Okabe–Ito パレット(国際的に使われる8色)

Black#000000
Orange#E69F00
Sky blue#56B4E9
Bluish green#009E73
Yellow#F0E442
Blue#0072B2
Vermillion#D55E00
Reddish purple#CC79A7

必須 どちらのパレットも、白背景の文字色に使うと4.5:1に届かない色が多い。文字色に使う場合は、個別にコントラスト比を確認する。〔WCAG 1.4.3〕

確認方法

動画・音声固有のルール

1.2 コントラスト

コントラスト比はWCAGの相対輝度に基づく値で、1:1(同じ色)から21:1(白と黒)までの値をとる。Webの基準であるが、他の媒体でも判断の目安として使える。

コントラスト比の基準〔WCAG 2.2〕
対象最低基準(AA)高い基準(AAA)
通常の文字4.5:1 以上7:1 以上
大きな文字(18pt=24px以上、または太字14pt=約18.7px以上)3:1 以上4.5:1 以上
アイコン・入力欄の枠・グラフの線など、文字以外の意味のある要素隣接色に対して 3:1 以上―
白地に #7676764.54:1 ◯ 本文の最低ライン
白地に #9999992.85:1 ✕ 本文には不可
白地に #FF4B00(CUD赤)3.36:1 △ 大きな文字のみ可
白地に #D64000(濃い朱色)4.57:1 ◯ 本文でも可
白地に #03AF7A(CUD緑)2.83:1 ✕ 文字には不可
黒地に #FFF100(CUD黄)17.83:1 ◯

動画・音声固有のルール

1.3 文字

字幕の分量と表示時間

字幕の分量と表示時間の目安
項目目安根拠
1秒あたりの文字数4文字までPEPNet-Japan
1行の文字数12〜17文字PEPNet-Japan
1枚の字幕の表示時間2秒以上(テレビCMの場合)民放連 字幕付きCM素材搬入暫定基準
本編の最初と最後前後1秒間は字幕を表示しない(テレビCMの場合)民放連 字幕付きCM素材搬入暫定基準

字幕の表記

字幕の表記ルールの例
情報表記の例根拠
話者(田中)こんにちは / >>こんにちは字幕付きCMハンドブック、PEPNet-Japan
効果音・音の情報[拍手][ドアが閉まる音](飲む音)PEPNet-Japan、字幕付きCMハンドブック
音楽♪字幕付きCMハンドブック
ナレーション<ナレーション文>字幕付きCMハンドブック
心の声・画面外の声《心の声》字幕付きCMハンドブック
強調したい語「商品名」字幕付きCMハンドブック

書体

書体と組版の共通ルール

1.4 図・アイコン・画像

1.5 レイアウト

1.6 動き・点滅

光の点滅・画面の切り替えの基準〔民放連・NHK「アニメーション等の映像手法に関するガイドライン」〕
対象ルール
赤色「鮮やかな赤色」の点滅は、特に慎重に扱う。
画面の切り替えコントラストの強い画面の反転や、輝度変化が20%を超える急な場面転換を、原則として1秒間に3回を超えて使わない。
パターン模様縞模様・渦巻き模様・同心円模様などの規則的なパターンが、画面の大部分を占めないようにする。

1.8 音

音声に関する基準
対象ルール根拠
収録済み動画必須 字幕を付ける。WCAG 1.2.2(A)
ライブ配信必須 リアルタイム字幕を付ける。WCAG 1.2.4(AA)
音声だけのコンテンツ必須 書き起こしテキストを付ける。WCAG 1.2.1(A)
自動再生必須 3秒を超えて自動再生される音声は、停止か音量調整ができるようにする。WCAG 1.4.2(A)
背景音話し声の背景に流す音楽や効果音は、話し声より20dB以上小さくするか、消せるようにする。WCAG 1.4.7(AAA)
音量の基準番組全体の平均ラウドネスを-24 LKFS(許容範囲±1dB)にそろえる(テレビ放送の場合)。ARIB TR-B32

2. 操作

2.2 入力方法

2.4 時間

3. 理解

3.1 言葉

文の書き方

言葉の選び方

動画・音声固有のルール

3.2 情報構造

3.5 表記

数字

日付・時刻

ふりがな・漢字

記号

3.6 多言語

5. 支援技術・代替形式

代替形式の種類〔Apple HIG、WCAG 2.2〕
形式内容対象者
キャプション話し声・話者・効果音を文字にして、映像と同期して表示する。聞こえない人・聞こえにくい人
翻訳字幕話し声を別の言語に翻訳して表示する。その言語の話者
音声解説映像だけで伝わる情報を、本編の音声の間に音声で説明する。見えない人・見えにくい人
書き起こし音声と映像の情報をすべてテキストにまとめる。見えない人・聞こえない人・内容を読み返したい人
手話手話通訳の映像を表示する。手話を第一言語とする人

6. 法規・規格

関係する法規・規格
名称内容
WCAG 2.2 1.2(時間依存メディア)字幕・音声解説・書き起こしの要件を定める。
民放連・NHK「アニメーション等の映像手法に関するガイドライン」光の点滅や画面の切り替えの基準を定める。1998年に制定され、2006年と2020年(HDR映像への対応)に改訂された。
総務省「放送分野における情報アクセシビリティに関する指針」字幕放送・解説放送・手話放送の2018〜2027年度の普及目標を定める。
ARIB TR-B32テレビ放送番組のラウドネス(音量)の運用規定である。
障害者差別解消法2024年4月1日から、事業者による合理的配慮の提供が法的義務になった。

7. チェックリスト

  1. 字幕が付いていて、話者と効果音も示しているか。
  2. 字幕は1秒4文字程度、1行12〜17文字程度に収まり、2秒以上表示されているか。
  3. 字幕がテロップや重要な映像と重なっていないか。
  4. 映像だけで伝わる情報を、ナレーションか音声解説で説明しているか。
  5. 点滅が1秒3回以下で、鮮やかな赤の点滅や全画面の縞模様がないか。
  6. 背景音が話し声を妨げていないか。
  7. スマートフォンの画面で、字幕とテロップが読めるか。
  8. 音声だけのコンテンツに書き起こしがあるか。

8. 出典