ユニバーサルデザイン ガイドライン

サイン・案内表示

駅・公共施設・商業施設・イベント会場などの誘導サイン、位置サイン、案内図、触知案内図、安全標識、電光表示を対象とする。

0. 前提

0.1 このガイドラインの読み方

  • 必須 は規格・法令・国際基準が要求する水準を示す。
  • ラベルのない項目は、規格の推奨値や、公的機関・専門機関の推奨を示す。
  • 根拠にした規格・資料は、末尾の「出典」にまとめている。
  • 章立ては全媒体で共通である。同じ番号の節には、どの媒体でも同じ種類の情報が載っている。
  • その媒体に当てはまらない節は省いている。

0.2 ユニバーサルデザインの7原則

ノースカロライナ州立大学ユニバーサルデザインセンター(1997)が定めた原則である。本ガイドラインの具体ルールは、いずれかの原則に対応する。

7原則と設計上の意味
原則設計上の意味
1. 公平な利用誰でも同じ方法で使える。特定の人だけを別扱いしない。
2. 利用における柔軟性利き手・速度・入力方法などを選べる。
3. 単純で直感的な利用経験・知識・言語能力に依存せず使い方がわかる。
4. 認知できる情報視覚・聴覚・触覚など複数の感覚で情報を伝える。
5. 失敗に対する寛大さ誤操作が危険につながらず、取り消せる。
6. 少ない身体的な努力無理な姿勢や強い力を必要としない。
7. 接近や利用のためのサイズと空間体格・姿勢・移動手段にかかわらず届き、操作できる。

0.3 利用者の多様性

色覚

  • 日本人男性の約5%(20人に1人)、女性の約0.2%(500人に1人)が一般色覚と異なる色覚をもつ。〔川崎市カラーUDガイドライン〕
  • 内訳はD型(2型)が男性の約3.5%、P型(1型)が約1.5%である。どちらも赤〜緑の範囲の色の区別が難しい。
  • P型では赤が暗く見える。濃い赤は黒とほぼ区別できない。
  • 色相の区別は難しいが、明度差には敏感である。

加齢・視力

  • 白内障では水晶体が濁り、青系統の光を通しにくくなる。青が暗く見えて黒と区別しにくくなり、白とクリーム色、緑と青、同系色や淡い色同士も区別しにくくなる。〔川崎市カラーUDガイドライン〕
  • 白内障の総患者数(継続的に治療を受けている人)は140万人を超え、65歳以上の人口の約5.6%にあたる。〔川崎市カラーUDガイドライン(2011年)〕
  • 視力が低下したロービジョンの人は、文字に近づいて読んだり、画面を拡大したりする。視野が欠けている人は、大きすぎる文字の一部しか見えないことがある。〔国交省バリアフリー整備ガイドライン〕

聴覚

  • 加齢で耳が遠くなった人を含めると、難聴の人は全国で約3,000万人と想定されている。〔字幕付きCMハンドブック〕
  • 加齢で高い周波数の音から聞こえにくくなる。〔JIS S 0013〕

言語・認知

  • 在留外国人は約293万人(2019年末)で、上位10の国籍・地域の公用語だけで9言語になる。〔やさしい日本語ガイドライン〕
  • 日本語を「日常生活に困らない言語」とする外国人は約63%である。情報発信の言語として「やさしい日本語」を希望する外国人は76%である。〔やさしい日本語ガイドライン概要〕
  • 情報の処理に時間がかかる人、多くの手順を覚えられない人、光や音の刺激に敏感な人もいる。

状況による制約

  • 障害がなくても、騒音下で音が聞こえない、屋外で画面が見えにくい、片手がふさがっているなど、一時的に同じ困難が生じる。

0.4 この媒体の基準の位置づけ

  • ガイドラインは整備内容を3段階で示す。「移動等円滑化基準に基づく整備内容」(義務)、「標準的な整備内容」、「望ましい整備内容」である。本ページでは、義務に必須を付け、標準的・望ましい整備内容はラベルなしで示す。
  • 公共交通機関の旅客施設には、バリアフリー法の移動等円滑化基準が適用される。国交省のバリアフリー整備ガイドラインは、その具体的な整備内容を示す。
  • サインは、情報内容・表現様式・掲出位置の3要素で見やすさとわかりやすさが決まる。〔国交省バリアフリー整備ガイドライン〕

1. 知覚

1.1 色

避ける色の組み合わせ

必須 次の組み合わせで情報を区別しない。右3列は、左の2色がP型・D型の色覚でどう見えるかを示すシミュレーションである。〔WCAG 1.4.1、川崎市カラーUDガイドライン、国交省バリアフリー整備ガイドライン、伝わるデザイン〕

赤 と 緑
赤 と 茶
緑 と 茶
濃い赤 と 黒黒背景の赤文字も読めない。
黄緑 と 黄
オレンジ と 黄緑
青 と 紫
水色 と ピンク淡い色同士は区別しにくい。
ピンク と 灰
紫 と 灰

シミュレーションはMachadoら(2009)の2色覚モデル(強度)で算出した。実際の見え方には個人差がある。

高齢者(白内障)で見分けにくい組み合わせ

✕ 青 と 黒

青が暗く見えるため黒と区別できない。

✕ 黄 と 白

水晶体の黄変で白が黄みを帯び、差が消える。白とクリーム色も同様である。

文字色と背景色の組み合わせ

必須 明度差のない文字と背景、混同しやすい色同士の文字と背景を使わない。色背景の上に色文字を重ねず、明るい背景には暗い文字、暗い背景には明るい文字を置く。〔WCAG 1.4.3、川崎市カラーUDガイドライン〕

✕ 悪い例
白地に黄 白地に空色 赤地に緑 赤地に紫 黒地に赤 濃い青地に赤 茶地に緑 黒地に濃い青
◯ 良い例
白地に黒 黄地に黒 空色地に黒 赤地に白 緑地に白 黒地に黄 黒地にクリーム

暗い背景に文字を置くときは、赤ではなく白・黄・クリームにする。

色の選び方

色だけに頼らない

必須 色は情報を補強する手段として使う。色が見分けられない人や白黒コピーでも伝わるよう、次のいずれかを併用する。〔川崎市カラーUDガイドライン、WCAG 1.4.1〕

✕ 色だけで区別し、凡例が離れている 悪い例:赤・緑・オレンジ・黄緑の4本の実線を同じ太さで描き、凡例をグラフの右に分けて置いた折れ線グラフ。 A B C D

P型・D型ではAとB、CとDが同じ色に見える。凡例との対応も取れない。

◯ 色・マーカー・線種・直接ラベルを併用 良い例:推奨配色の赤・青・オレンジ・空色を使い、丸・四角・三角・菱形のマーカーと実線・破線を組み合わせ、各線の右端に系列名を直接書いた折れ線グラフ。 ABCD

白黒印刷でも4本を区別できる。

✕ 赤文字だけで強調

提出期限は 10月15日(水) です。

P型では黒文字と区別できず、強調に気づけない。

◯ 朱色+太字+下線

提出期限は 10月15日(水) です。

色が見えなくても太字と下線で強調が伝わる。

推奨カラーパレット

CUD推奨配色セット ver.4(カラーユニバーサルデザイン機構)は、一般色覚・P型・D型・弱視・白内障の人による評価を経て選ばれた20色である。20色のどの組み合わせでもよいわけではない。組み合わせるときは明度差をつけ、シミュレーションで確認する。

CUD推奨配色セット:アクセントカラー(サイン・グラフ・文字色向け)

赤#FF4B00
黄色#FFF100
緑#03AF7A
青#005AFF
空色#4DC4FF
ピンク#FF8082
オレンジ#F6AA00
紫#990099
茶#804000

CUD推奨配色セット:ベースカラー(地図・背景など広い面積向け)

明るいピンク#FFCABF
クリーム#FFFF80
明るい黄緑#D8F255
明るい空色#BFE4FF
ベージュ#FFCA80
明るい緑#77D9A8
明るい紫#C9ACE6

CUD推奨配色セット:無彩色

白#FFFFFF
明るいグレー#C8C8CB
グレー#84919E
黒#000000

印刷用のCMYK値と塗料用のマンセル値は、CUDOのガイドブックに記載されている。

Okabe–Ito パレット(国際的に使われる8色)

Black#000000
Orange#E69F00
Sky blue#56B4E9
Bluish green#009E73
Yellow#F0E442
Blue#0072B2
Vermillion#D55E00
Reddish purple#CC79A7

必須 どちらのパレットも、白背景の文字色に使うと4.5:1に届かない色が多い。文字色に使う場合は、個別にコントラスト比を確認する。〔WCAG 1.4.3〕

確認方法

サイン固有のルール

安全色

安全標識の色は、意味が規格で決まっている。安全色の色度は、2018年の改正で色覚の多様性・ロービジョン・加齢に配慮した値になった。〔JIS Z 9103:2018〕

安全標識の安全色と意味〔JIS Z 9101:2018 表1〕
安全色意味対比色使用例
赤禁止白禁煙、飲料不適、接触禁止
赤防火白火災報知機、消火設備、消火器
黄注意警告黒高温注意、バイオハザード、電圧注意
青指示白保護めがね着用、保護具着用、手洗い励行
緑安全状態白救護室、非常口、避難所
安全標識の4種類の見本。禁止は赤い円に斜線、注意警告は黒枠の黄色い三角、指示は青い円、安全状態は緑の四角。禁止赤・円と斜線!注意警告黄・三角i指示青・円安全状態緑・四角
安全標識は、色に加えて形でも意味を区別できる(色と形の組み合わせはJIS Z 9101による)。

1.2 コントラスト

コントラスト比はWCAGの相対輝度に基づく値で、1:1(同じ色)から21:1(白と黒)までの値をとる。Webの基準であるが、他の媒体でも判断の目安として使える。

コントラスト比の基準〔WCAG 2.2〕
対象最低基準(AA)高い基準(AAA)
通常の文字4.5:1 以上7:1 以上
大きな文字(18pt=24px以上、または太字14pt=約18.7px以上)3:1 以上4.5:1 以上
アイコン・入力欄の枠・グラフの線など、文字以外の意味のある要素隣接色に対して 3:1 以上―
白地に #7676764.54:1 ◯ 本文の最低ライン
白地に #9999992.85:1 ✕ 本文には不可
白地に #FF4B00(CUD赤)3.36:1 △ 大きな文字のみ可
白地に #D64000(濃い朱色)4.57:1 ◯ 本文でも可
白地に #03AF7A(CUD緑)2.83:1 ✕ 文字には不可
黒地に #FFF100(CUD黄)17.83:1 ◯

サイン固有のルール

1.3 文字

視距離と文字の高さ

各視距離から判読するために通常有効な文字の大きさで、最低限の目安である。文字高は、和文では指定書体の「木」の高さ、英文では「E」の高さを指す。〔国交省バリアフリー整備ガイドライン〕

視距離に応じた文字高〔国交省バリアフリー整備ガイドライン〕
視距離和文の文字高英文の文字高
30 m120 mm 以上90 mm 以上
20 m80 mm 以上60 mm 以上
10 m40 mm 以上30 mm 以上
4〜5 m20 mm 以上15 mm 以上
1〜2 m9 mm 以上7 mm 以上
視距離ごとの和文の最小文字高を棒の長さで比べた図。1から2メートルで9ミリ、4から5メートルで20ミリ、10メートルで40ミリ、20メートルで80ミリ、30メートルで120ミリ。視距離和文の文字高(棒の長さ)1〜2 m9 mm4〜5 m20 mm10 m40 mm20 m80 mm30 m120 mm
視距離が2倍になると、必要な文字高もほぼ2倍になる。

書体

書体と組版の共通ルール

1.4 図・アイコン・ピクトグラム

1.5 配置・掲出高さ

サインの種類と配置

サインの4種類〔国交省バリアフリー整備ガイドライン〕
種類役割
誘導サイン施設などの方向を指示する。
位置サイン施設などの位置を告知する。
案内サイン位置関係や利用条件を案内する(構内案内図など)。
規制サイン利用者の行動を規制する。

掲出高さ

掲出高さの目安〔国交省バリアフリー整備ガイドライン〕
対象目安
遠くから見るサイン視認位置からの見上げ角(仰角)10°以内で、できるだけ高い位置。混雑時に前方の歩行者に遮られにくく、車椅子使用者からも見える高さ
近くから見るサイン(案内図・時刻表など)表示面の中心を床から135cm程度。立位の視点(約156cm)と車椅子の視点(約117.5cm)の中間
掲出高さの断面図。立っている人の目の高さは156センチ、車椅子の人の目の高さは117.5センチ。近くから見るサインの表示面の中心は、その中間の135センチ。遠くから見るサインは、目の高さから見上げ角10度の線より下に置く。立位の視点 156cm車椅子の視点 117.5cm表示面の中心 135cm見上げ角 10°
近くから見るサインは中心を135cm程度に、遠くから見るサインは見上げ角10°以内に置く。

1.6 動き・点滅

1.7 光・照明

1.8 音

1.9 触覚

触知案内図の目安〔JIS T 0922〕
項目目安
設置高さ壁面に垂直に設置する場合、触る範囲の中心を床から1,400mm程度
全体の大きさ横1,000mm以内、縦600mm以内
線・面の高さ0.2〜0.5mm
現在地の記号高さ1〜5mm程度の半球形など、他の記号と高さが明らかに違う形
記号と説明文の間隔5mm程度
点字JIS T 0921に従う

2. 操作

2.1 接近・届く範囲

3. 理解

3.1 言葉

3.2 情報構造

3.3 一貫性

3.5 表記

数字

日付・時刻

ふりがな・漢字

記号

3.6 多言語

英語表記の方法〔観光庁 多言語対応ガイドライン、国交省バリアフリー整備ガイドライン〕
場合方法例
基本固有名詞(ローマ字)+普通名詞(英語)成田空港 Narita Airport、日比谷公園 Hibiya Park
固有名詞だけでは意味をなさない場合固有名詞+普通名詞(ローマ字)+普通名詞(英語)清水寺 Kiyomizu-dera Temple、荒川 Arakawa River
日本語の読みを伝える必要がある場合ローマ字(必要に応じて英語で意味を補う)茶碗 Chawan (Tea bowl)
英語で広く通じる日本語ローマ字だけ温泉 Onsen、寿司 Sushi
ローマ字のつづりヘボン式

4. 使用環境

5. 支援技術・代替形式

6. 法規・規格

関係する法規・規格
名称内容
バリアフリー法 移動等円滑化基準旅客施設の標識(JIS Z 8210への適合)や運行情報の提供設備を義務づける。
国交省「バリアフリー整備ガイドライン(旅客施設編)」旅客施設の整備内容を、義務・標準・望ましいの3段階で示す。
JIS Z 8210案内用図記号(ピクトグラム)を定める。
JIS Z 9101:2018安全標識のデザインと安全色の意味を定める。
JIS Z 9103:2018安全色の色度を定める。2018年に色覚の多様性に配慮した値に改正された。
JIS T 0921標識・設備・機器への点字の表示方法を定める。
JIS T 0922触知案内図の情報内容・形状・表示方法を定める。
JIS T 9251視覚障害者誘導用ブロックの形状・寸法・配列を定める。
観光庁「多言語対応の改善・強化のためのガイドライン」(2014年)外国人向けの多言語表記の方法を定める。

7. チェックリスト

  1. 想定する視距離に対して、文字高が表の値以上あるか。
  2. 角ゴシック体を使い、過度な長体にしていないか。
  3. 図と地の明度差が大きく、青と黒・黄と白の組み合わせを使っていないか。
  4. 路線などを色で分ける場合に、文字や記号を併記しているか。
  5. 設備を示すピクトグラムがJIS Z 8210に適合しているか。
  6. 掲出高さが、混雑時や車椅子使用者の視点でも見える高さか。
  7. 照明の映り込みや逆光がないか。
  8. 案内図の向きが空間の左右と一致し、現在地が示されているか。
  9. 英語表記が「固有名詞のローマ字+普通名詞の英語」になっているか。
  10. 触知案内図・点字・音声案内で、視覚障害者にも情報が届くか。

8. 出典